あかりの作曲・mix日記

作曲・mix、制作中に気づいた大切なコト。制作裏話。

楽曲の奥行きって何??奥行きのあるmixとは?

◆楽曲の奥行きって何?

mixについての考察等で良く聞きますが「楽曲の奥行き」って一体何なんでしょうか?

人は何をもって「奥行きがある」と感じるのか。

 

今回は楽曲の奥行きについて一緒に考えてみたいと思います。

 

◆奥行きを表現するには?

さて、今回はステレオでのmixを前提とします。ヘッドホンが左右に2つの状態です。

・空間的な響き=どのくらいの空間で音が鳴っているのか

・空間上の楽器の配置

デジタル空間においては上記2つの要素によって奥行きを表現すると思います。(他にもあるのかな…)

 

◆空間的な響き

これは基本的にリバーブで調整すると思います。空間の響きをざっくり説明すると、

 

・直接音→音源から直接耳に届く音です。

例えば、ボーカルが聞こえた後、20ミリ秒等遅れてドラムが聞こえてきた場合、リスナーから見て、ボーカルよりドラムの距離が遠いことになります。

 

・アーリーリフレクション→壁or天井に一回反射して最初に届く反響音です。

直接音が聞こえた後、アーリーリフレクションが聞こえてきますが、直接音とアーリーリフレクションの時間差が多いほど部屋が広いことになります。

 

例えばですが、2パターンを比較するとこうなります。

直接音→20ミリ秒→アーリーリフレクション→部屋が狭い

直接音→70ミリ秒→アーリーリフレクション→部屋が広い

 

・リバーブテール→壁or天井に何度も反射して聞こえてくる反響音です。

部屋の広さと材質で反射がどれくらい残るかが変わります。

洞窟(岩)や金属は反射音が残りやすく、木や布は吸音されて反射音が消えやすいです。また、空間が大きいほど反射音は残りやすく、空間が狭いと消えやすいです。

 

これらの要素の組み合わせで、音が出ている空間の奥行き感を感じています。

 

◆楽器の配置

デジタル空間における音の配置です。ステレオの場合左右と手前、奥に配置しやすいと思います。

 

左右→パンでコントロールします。

手前・奥→音そのものの音量及び、高音域の距離減衰によって調節できます。

 

左右については簡単ですが、手前と奥への調節はやや難しいかも?小さい音でも高音域がはっきりしていると、耳元で小さい音がなっていると感じます。ASMR音声なんかはそうですね。また大きな音でも高音域が減衰していると遠くで大きな音がなっていると感じます。私はmixするとき、バスドラムなどは高音域を少し減らす事が多いです。

 

デジタル空間の場合、常に音源同士の比較で遠近を感じます。これも大事なポイント。ボーカルよりもきらびやかな高音域がある音源があると、その音源はボーカルより近くにあると感じます。ベル系やストリングスの高音域を放置するとボーカルより前へ前へと出しゃばってきたり…とかは良くあります。

 

ステレオ音源、ヘッドホンが左右で2つの場合は上下と前後(=自分を中心にした顔の前と頭の後ろ)の音像は作れないと思っていいです。あれらは全てまやかしです笑 多少の表現はできますが言われないとわからない、言葉または映像の手助けがあって成立します。

 

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◆空間の大きさと楽器の配置のバランス

例えばリバーブがめっちゃ多いのに、楽器が全部真ん中に位置してるなんていう音像はちょっと不自然ですよね。すごい広い空間に居ながら真ん中に密集して演奏してるのでしょうか?

 

逆にリバーブがめっちゃすくないのに、楽器全体の配置が広がっていたら?ものすごいデッドな空間-無響室で演奏してるのでしょうか?ちょっとリアルでは想像し難い空間ですよね。

 

空間の大きさと楽器の配置感、デジタル空間にどのように配置していくかのバランスも大事だと思います。そういう聞き心地の良いバランス感が大事だと思うのです。

 

 

◆全部の音がはっきり聞こえないとイヤ?

奥行きがなくなる原因のひとつとして、音を詰め込みすぎ、詰め込むから一つ一つの音がわかりにくい、だから全部の音像を近づける…という悪循環に陥ってる場合もあります。

 

日本人リバーブ嫌いにもありましたが、リバーブを上手に使ってるトラックは音の数が少なく、一つ一つの楽器に存在感があります。

 

小さい音は小さく、大きな音は大きく、メリハリがあります。

ドラムだって"縁の下の力持ち"のポジションなのにボーカルと同じ位置まで近づいてきたら変でしょ?ボーカルは前へ、ドラムは後ろへ、そういう音像を作ると「奥行きがあるね!」と感じるようになるのだと思います。

 

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日本人リバーブキライはこちら笑

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◆音楽文化的な側面から

前面に張り付くようなmixというのは良く言われてますが、聞き慣れてるいるとそれが普通になってしまって、下手に奥行きを出そうとすると受け入れられないということもあります。

実際にボーカル控えめ、ビート強めのmixは日本においては受け入れずらい傾向があります。ほぼ必ずボーカル音量上げてと言われます。

 

とある海外でも活躍するエンジニアに聞いた話だと、日本においてはほぼ必ず「ボーカルの音量あげてくれ」、洋楽の方ではほぼ必ず「低音出してくれ」と言われるらしいです。文化なんですかね…?

 

 

◆おわり

楽曲を聞く人がどこに居て、楽器はどんな配置で?その空間はどのくらいの大きさ?というのを3Dでイメージして音作りをすると良いのかなと思います。

ただ、リアルの空間とデジタル空間は似て非なるものですので、デジタル空間ならではの表現-型からの崩しもアリよりのアリだと思います。

 

聞き心地よく、迫力あるトラックづくりを目指したいですね。

おわり。

 

 

 

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