◆リフレクションフィルターって効果あるの?
とても難しい問題です。
ある環境ではとても有意義に働きますが、違う環境では余計なノイズ・不必要な色付けを発生させる原因にもなりえます。
ちょっとややこしいですが、どういう状況なのか少し整理してみましょう。
◆音響の知識がない人があれこれしても無駄
まず最初にこれを伝えたいです。
「音響の知識がない人があれこれしても無駄。」
ホントに。
ネットに書いてあることを鵜呑みにして、防音ブース工作~とかよく聞きますが、ホントに無駄です。録音、音響の知識がちゃんとある人に相談しながら工作するならいいですが、音響知識がない人があれこれ考えてやっても、お金の無駄、時間の無駄、さらにはその音源を送られてきた人も余計な修復作業をするハメになってひどいめにあいます。
部屋の中に吸音材をペタペタ貼り付けたものの、テープが剥がれて落下して大惨事なんていうのも見たことあります。ただただ時間の無駄です。悲惨です。
素直にお部屋の真ん中にマイクを設置して、マイクから10センチ離れて録音してください。これだけでまずまず綺麗な音で録れますから…
宅録の失敗の原因は、
60%はマイクから離れすぎが原因です。
30%は録音音量(ゲイン)の調整ミスです。
10%はネット情報を鵜呑みにした無用なエフェクト追加です。
1%は謎のミラクルです。
「私の部屋、反響が多くて歌録音きついんだよね~。」なんて言ってる人に詳しく話を聞いたらマイクから離れて録音していた。なんてホントによくある話です。リフレクションフィルターを買う前に、マイクに少し近づいて見てください。あっさり解決します。
リフレクションフィルターを買ったほうが良いかなと迷ったら、知り合いの音響の知識がある人に相談するか、SNSに録音した音声を投下してみてください。有識者から回答が得られると思います。
わけもわからず買って使っていると、気づかないまま永久に良くない環境で録音しつづけることになります。買う前にぜひ一度相談してください。
◆正しく設置できてる?
正しい位置に設置できていますでしょうか?
リフレクションフィルターとマイクの位置関係でも効果がかなり変わってしまいます。正しい・効果的な設置箇所を自力で調節できますか?細かな反響音を判別して微調節できなければ使う意味がありません。リフレクションフィルターの半円状の形状によって、吸収しきれず反射した音声がすべてマイクに向かって飛んで行くなんてひどい状況にもなり得ます。
ベッドルームや、部屋に布製品が多い、もともと反響が少ない部屋では使う意味があまりありません。
リフレクションフィルターを導入したからと言って、直ちにスタジオレコーディングの品質になるわけでもありません。
部屋の状況を見て、必要か否かしっかり判断したいです。
◆やっかいなノイズ-コムフィルタリング
音声録音時に付近に硬い物体があるとその物体にぶつかって跳ね返った音が影響して音が滲んだりすることがあります。コムフィルタと言いますが、これがかなりやっかいなノイズで、リフレクションフィルターを使用するとこのノイズが発生することがあります。
こちらの音を聞いてみてください。合計4回音が鳴ります。
前半は全く同じ音を同じタイミングで鳴らし(2回)、後半は原音から10ミリ秒ずらして同じ音を鳴らしています(2回)。
後半は一瞬遅れた音が原音に影響を与えて音が滲むような現象が起きています。一見すると違いがわかりにくいですが、綺麗な音と比べたらわかりますよね。これがコムフィルタです。
リフレクションフィルターで吸音しきれなかった音が反射してコムフィルタを起こし音を滲ませます。
最近は音声加工技術もどんどん進歩してチートツールなんて呼ばれるエフェクトプラグインもたくさんあります。
明瞭度をブーストする、リバーブを除去する、背景ノイズ・ホワイトノイズを除去する、チェーンソー・ジェットエンジンの音を除去なんてすごいものまでありますが、コムフィルタを綺麗に除去するプラグイン等は見かけません。それほど除去が難しいのです。ぶっちゃけコムフィルタの除去は無理です。
コムフィルタの除去は無理です。
個人的には部屋の反響は多少あってもコムフィルタがない方が綺麗だと思います。反響はある程度除去できますし、明瞭度もブーストできます。でもコムフィルタだけはどうあっても綺麗に除去できないのです。
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こっちも読んでみてね。(Google翻訳して読んでね)
「ポータブルボーカルブースはどれくらい効果的ですか?」
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◆防音と吸音は違う
防音とは音を外に出さないことです。つまり防音ブースの内側では音が乱反射してひどいことになっています。
吸音とはなるべく音を反射させないことです。むしろ音が何にもぶつからず素通りしたほうが反射する音は少なくなるでしょう。
綺麗に録音するには反射した音をマイクに入れないことです。
宅録の時に目指すべきは防音ではなく吸音です。マイクの近くに反射しそうな硬い物体はない方がいいのは明らかですよね。代わりに宅録する部屋を柔らかい何かで満たした方が反射音が少なくなり、よりデッドな環境に近づくというのは想像できるでしょうか?
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デッドとは
部屋の反響がないこと。無響室とか。
デッドあるほどエフェクトを追加したときの余計な劣化がなくなるので、特にボーカル等はデッドで録音するとピッチ補正による声の劣化が抑えられる。
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◆秘密兵器くま
さて上手に吸音するには、なるべく凸凹が多く、やわらかい物体で、ある程度大きさがあって、持ち運びやすく、見た目が可愛いものが良いですよね!?
え、そんなのあるかって??
ほら、あるじゃん。あれだよあれ~!!
くま~!!
リフレクションフィルターの代わりにくまのぬいぐるみを買って、部屋の隅に置きましょう。可愛いし。吸音力抜群です。もう少しデッドにしたいなと思ったらくまを増やし、デッド過ぎたらくまを減らすことで響き具合の調整までできます。
くま有能すぎませんか!?
くまを置く場所は部屋の隅っこがオススメです。部屋の隅っこは音が乱反射するのでここに置くと上手に吸音してくれます。
今日はマイクの新調に合わせて、レコーディング部屋の吸音環境を整えました!
— Ryo☘️コンサーティーナ弾き (@ryo_concertina) 2023年12月24日
グランドピアノと電子ピアノ✕2全てに毛布をかけて、部屋の角の扉のところにでかいクマを配置しました。
録れ音が劇的に変わってます!
フォロワーのあかりさんに相談に乗っていただきたくさん教えていただきました🙇 pic.twitter.com/pVM48dClql
こちらはお部屋の状況を細かく教えてもらって、私から吸音インテリア(!?)の提案をした実例です。毛布、ぬいぐるみで工夫して上手に吸音しています。すごく録音環境が良くなったそうです。やった~!⸜(*ˊᗜˋ*)⸝
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例えば低いラの音の場合220Hzなので、波長約1.56メートルの1/4の幅の39センチが吸音材として適切だそうです。39センチ以上の大きさのくまならさらに効果的です。
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◆音楽的なチューニングを
歌ってみたmixにおいてはボーカルはほとんどが宅録で送られてきますが、そのまま部屋の反響を少し調整してリバーブエフェクトをあえて追加しないこともあります。自然な反響がそのままちょうどよいということもあるのです。
結局必要なのは、デッドにすることではなく、音の素材として綺麗な録音ができるかどうかです。
綺麗な素材として録音できているなら、部屋の反響が多少あっても良いのです。
今はリバーブ成分を多く/少なくするエフェクトもあるし、もともとある響きを上手に使ったほうが音の統一感としては自然だし、素材として綺麗ならそれでおっけーなのです。無理にデッドにしなくていいんだよ。
◆おわり
録音環境はホントに千差万別なので、吸音・調整に何が一番適切なのか判断が難しいです。状況によってはリフレクションフィルターが良い場面もたくさんあると思います。
状況によってしっかり使い分ける。これが大事。
むやみに情報に踊らされないで、音響が分かる人に思い切って相談してみて。もちろん私も相談に乗りますので。
快適な録音ライフで音楽活動して行けたら嬉しいですよね。
おわり。